佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかし。

偉い人は靴を履いてたんですよ。

靴を履いていたら、どこに行くにも痛くないです。

それで、弟と兄ちゃんは、お金を貯めて靴を買うわけです。

すると、兄ちゃんは、

「靴どうする。いつ履くようにする?」と聞いて、

「俺(おい)は、昼からが良か」と言うわけです。

それで、弟は、

「そいぎ、僕が朝から」と言いました。

そして、弟は朝から靴を履いて良いものだから、

早く起きて、山に行って木を取って来たりしました。

足は痛くないから、草刈りなど、すごく仕事がさばけたそうです。

そして、昼から兄ちゃんに靴をやるわけです。

兄ちゃんは、昼からその靴を履いて仕事するけど、

弟は朝から長く履いていたように思い、外は暗くなり、

仕事をしない夜中でも靴を履いて家の中を歩き回ってました。

すると、二人で、その靴をそんな風にして履いていたからすり切れてしまいました。

すると、弟が、

「兄さん、あの靴があっぎぃ、本当(ほん)に良かねぇ、

いっぱい仕事も出来(でく)っしぃ。また、買おうか」

と言ったら、兄ちゃんが、

「嫌ぼぅ。靴のあっぎにゃあと、俺(おい)は、一晩寝られんけんが、もう買わん」

と言われました。

 

 

(出典 さが昔話 P53)

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