佐賀市長瀬町 納富信子さん（大14生）
語り 田口康子さん
すごく、ケチな叔父（おんじ）さんがいました。
そして、勘右衛門（かんね）どんは、痩せ馬を持っていました。
その馬を叔父方に連れて行き、エサを食わせたら少しは肥えるかなと思って、叔父方に連れて行きました。
「叔父（おんじ）さん、こん馬は金糞たるっばん。叔父さん、あんたも買わんかんたー【買いませんか】」と言ったら、
その叔父さんは、ケチだから、
「本当（ほん）なごとかん【本当のことね】、勘右衛門どん」と聞きました。
すると、勘右衛門どんは、
「俺（おい）が嘘（すら）ごと、言うもんね」と言って、小判を馬の尻に押し込んていました。
それで、馬に糞をさせたら、小判がチャリンと落ちて来たそうです。
それで、叔父さんは、
「買う、買う」と言ったもんだから、
「ちょっと高（たっ）かよー。高かばってん、毎日こがん生（う）むぎ、すぐ取い戻す」と言って、
勘右衛門どんは、その馬を売ったそうです。
それで、叔父さんから小判を貰って帰って来ました。
すると、叔父さんは、
「今日は生むか、今日は生むか、小判の糞たるっか」と言って、待ってましたが、
まったく生まずに、普通の糞ばっかり垂れました。馬は食べるのは、どれだけでも食べるんですが。
それで、勘右衛門どんに、
「あさんが【お前が】金糞たるって言うたけん、買（こ）うたばってん、いっちょでん小判の出て来（こ）んぼう」
と言いました。勘右衛門どんは、
「叔父（おんじ）さん、何食わせたかい」と聞いたら、叔父さんは、
「藁（わら）てん食わしたくさー」と答えました。
すると、勘右衛門どんは、
「そがんとば食わしたけん、なん、金糞たるっかん。
小判ば食わせんないば、金糞たるんもんじゃなか。
俺（おい）な、ごっとい、小判ば食わせよったとけぇ」と言い返しました。
そして、叔父さんは、すごく怒ったものだから、
勘右衛門どんは
「そいないば、あんたから貰ったしこ（だけ）銭（ぜに）ば返すけん、馬ば持って帰ろうじゃい」
と言って、馬を連れて帰りました。
その馬は、とても肥えていました。
叔父さんが、馬に草をたくさん食べさせたからです。
（出典 さが昔話 P42）
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