佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)
村の青年どんの寄ってね、
「今日は、何じゃい寒うなって来たけん、泥鰌汁(どじょうじる)ば、しゅうかー」ち言(ゅ)うて、
誰(だい)でん、芋のごたっとば、何でんかんでん持って来てから、
泥鰌も取って来て泥鰌汁ば、しよったて。
そいぎぃ、勘右衛門(かんね)が、太うか豆腐ば持って来て、
「俺(おい)は、豆腐持って来た。このまま太かけん、入れて良かのう」ち言うて、入れるわけよ。
そいぎぃ、泥鰌ば入れたぎぃ、泥鰌は鍋のだぎって【沸騰して】くっぎぃ、
豆腐の中さい、みーんな、ねい込んでいくて【入り込んでいくと】。
そいば考えとらしたとは、勘右衛門どんだけで、
他の者(もん)な、みーんなホケーっと、しとったて。
そいぎぃ、ちょうど【丁度】、鍋のたぎっ【沸騰する】時分になってから、
大抵、もう泥鰌が豆腐の中(なき)ゃあねい込んだろうて思うて、勘右衛門どんの、
「俺(おり)ゃあ、用事ば思(おみ)ぇついたけん、ちょっと帰っ。
豆腐は俺(おい)が持って来たけんが、俺が豆腐は持って帰っばん」ち言(ゅ)うてから、
豆腐ばかい掬(すく)うてから、持って帰らしたて。
そいぎぃ、出来上がってから、みんなが食うたぎぃ、泥鰌は、いっちょでん入っとらんやったけん、
「ありゃあ、勘右衛門にやられた」ち言うて、そん時になって、気のついたて。
(出典 さが昔話 P41)