佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 仁王さんは、日本の人でしょうが。

そいで、中国に八郎さんておらしたて。

そいぎぃ、日本の仁王さんが、力較べに向こうに行かしたわけよ。

そいぎ、たまたま、そん時、留守やったて、八郎さんが。

そいぎぃ、そこの妹さんが、

「今、呼んできますけんが、ちょっと、お茶でも飲んで、

沢庵(たくあん)でも食べて待っとって下さい」て、言いなったて。

そしたら、漬物(つけもん)石のものすごく太かとば、

その女の妹さんが、ヒョイと抱えて、その下の桶の中から漬物を出したて。

そうしたら、その漬物重石(おぶし)がかなり太かて。

そいで、妹さんのおらん間に、実際その漬物石ば抱えてみたぎぃ、抱えきらんごと大きかったて。

そいたら、

「妹さんのこがん力持ちない、八郎さんない、どがん強かかわからん。

とても、これじゃかなわん」ち言(ゅ)うて、もう日本さい舟に乗ってから逃げようとしたて。

そしたら八郎さんが、そいば見つけて鎖ばヒューっと舟に投げたぎぃ、

その鎖の舟の艫(とも)にガボーっと引っかかったもんじゃい、舟をドンドン引き寄せられたて。

そいぎぃ、日本ば出る時に、おふくろさんがね、

「こいば絶対、持って行け。

もう、何じゃい、どがんでんされんごとなったぎぃ、こいば開けろ」て言うて、箱を持たせんさったて。

そいけん、そいば開けたぎぃ、その中に鑢(やすり)の入っとったて。

そいで、もう引き寄せられよんもんじゃい、どがんしゅうでんなかもんじゃい。

そいで、渾身の力ば込めて、その鑢で鎖ば切って、ようやく逃げ帰って来たて。

そいぎ八郎さんも、

「日本の仁王さんな強いもんだ。鎖ば引きちぎって逃げたて」ね、感心したて。

 

(注) 本話は、弟の南里開雄が語った話である。

 

(出典 さが昔話 P27)

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