佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

  百足(ムカデ)が、たくさんの足で黒髪山を七回半まわるぐらいの大きさだから、

足がすごいわけですよ。

その百足が里に下りてきて田んぼば荒らすわけ。

ザラザラって、歩くだけで、もう田んぼはなくなってしまうごと、田んぼば荒らすもんだから、

庄屋さんたちが、

「どがんじゃいせんばいかん。もう、百足がいっぺん下りて来(く)っぎぃ、このへんの田んぼは、

全部、実の入った作物でん何でんのうなって(なくなって)しまう、

百足の足で荒らされてしまうけん」ち言(ゅ)うて、

ちょうど(丁度)俵藤太が来あわせとったけん、その俵藤太に、百足退治ば頼んだて。

そいぎ俵藤太が

「そいないば」ち言(ゅ)うて、黒髪山の百足の頭めがけて弓ば射かけたて。

そいばってん、もう、跳ね返って、いっちょでん刺さらんもんじゃい。

そいぎぃ、俵藤太のお母さんがね、

「弓のね、弓の矢じりに唾(つば)つけて、射てみんしゃい」て、言いんさっわけ。

そいぎぃ、矢じりに唾ばつけてね。そして、射ってみたぎぃ、そいが抜かって、

矢が刺さってね、百足が死んだわけですよ。

そいでもう、これで安心してね、

「もう、荒らされることもなかろう」て言うて、長者がね、米の入った俵ば俵藤太にやんさっわけ。

そしたら、そのお米がね、俵からいくらとってもとっても、またいっぱいになるて。

そいぎ、俵藤太の家来がね、この俵は、どぎゃんしとっじゃろか。

どがんもしとらん普通の俵んごたっとけねぇ。て思うて、俵のお尻ばね、「カッポーン」て、

叩いてみっわけですよ。

そいぎぃ、そっから小さか蛇の「ヒョロヒョロヒョロ」って、出て来て逃げて行たて言うわけ。

そいぎぃ、その俵はもとの俵になって、お米はもう出てこんごとなったて。

そいけん、俵の尻(けつ)を叩くぎいかんて。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さが昔話 P113)

標準語版 TOPへ