佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

  むかーし。

とてもやさしくて、きれいな娘さんがおったて。

そいばってん、いっちょでん縁談のまとまらんもんじゃい、世話好きの人が来て、

「どうして、縁談のまとまらんやろか」て、お母さんに聞きんさったて。

そいぎぃ、お母さんの、

「ほんに、うちんとはですねぇ、おならば出さすっとですよ。屁ぶらすとですよー」て、

言いんさったて。

そして、

「おみやい(お見合い)に行っても、屁ぶらすもんじゃい、破談になってしまうとですよ」て、

言いんさったて。

そいぎぃ、

「そがんことは、もう、私(あたし)にまかせときんさい」ち言(ゅ)うて。

そして、その娘ばおみあいに連れていったて。

そいぎぃ、案の定、娘さんがモジモジしだしたんだって。

そいぎにゃとは、仲人さんのね、すまーした顔でね、

「きびすをあてて、すかしそーらえ」ちゅうて、言うたて。

「足のかかとんところをちょうど(丁度)尻の穴ん所(とこ)に押さえてね、

プーって、すかしなさい」て、言うたて。

そいぎやっぱい、臭いはしてくんもんじゃい、仲人さんの、

「あら、こなたは(ここの家には)、うらといさん(便所のくみとりさん)の来とんさっなたー」て、

言うたて。

そいぎね、やっとね、縁談のまとまんさったて。そしたら、その嫁さんな、

もう、旦那さんとおっても、おなら出そうごとしてたまらんばってん、

そいば、ごっとい(いつも)こらえとんさっもんじゃい、色あーおなってしまいんさったて。

そいぎにゃあとは、

「お前、なんじゃい、あっとか」て、旦那さんが聞きんさったて。

そいぎぃ、

「私(あたし)ゃあ、屁ばふろうごとしてたまらんばってん、ふられじおっとたんた」て、

言いんさったて。

そいぎぃ、

「そがんこと、夫婦の中で遠慮すっこといんもんこー、ふらんこー」ちゅうて、

言われたもんじゃい、思いきってプーって、ふんさったぎぃ、旦那さんのプーって、

遠くに飛んでいきんさったて。

そいで、旦那さんの飛んでいきんさったところがね、せんぺい屋の屋根の上やったて。

そいぎにゃあと、せんぺぇば焼きよんさったせんぺぇ屋の親父さんの出てきて、

「何事(なんごと)じゃったろうか」ちゅうて見たて。

そいぎ、人の飛んできとんもんじゃい、

「あらー、どがんしんさったかんた」ち言(ゅ)うたぎぃ、その旦那さんが、

「がんして、飛んできとっとくさんたー」て、言いんさったて。

そいぎぃ、せんぺい屋の親父さんの、

「そいない、せんぺぇどん噛んで、お茶どん飲んで、

気分どんなおしていきんさい」ち言(ゅ)うたぎぃ、

「一遍(いっぺえ)かんででん、ここまで飛んできたとこれぇ、

千遍(せんぺぇ)どん噛むないどがんなっじゃいわからん。私(あたし)ゃあ、帰ります」て、

言いなったて。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さが昔話 P109)

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