佐賀市長瀬町 納富信子さん（大14生）
作：花山院路子
語り 杵島郡江北町 江頭千昭さん
むかーし。
お寺の近所に飴がた屋さんがあって、飴がた売りのお婆ちゃんがいました。
それから、夜遅くなってから顔色が蒼いようなお母さんが、
トントントントンと戸を叩いて、
「飴がたください」と言って、買いに来るわけです。
そして、一文銭で飴がたを買って帰るわけです。
飴がた売りのお婆ちゃんは、
こんな夜中に何と言うことだろう。
おっぱいが足らずに、赤ちゃんでも泣いているのかと思いました。
そして、また次の夜も同じ頃に買いに来るわけです。
それが六日間、続くわけです。
そして、六日経ったら来ないようになったから、
「おかしかぇ」と言って、そのお婆ちゃんは近くのお寺に行って、
「こがんやってから、夜中に飴がたば買いに来て、一文銭ば持ってきてね、六日したら、
きんさらんごとなったですよー」と和尚さんに話しました。
和尚さんは、
「そりゃあ、不思議なこともあんもんねぇ」と言われました。
「そがん言うぎぃ、この間、埋めた女の人は、たいていお腹（なか）の大きかったごたっねぇ」
と言って、飴がた売りのお婆ちゃんと和尚さんは、お墓の所に行きました。
すると、お墓の所から子供の泣き声が聞こえてきたそうです。
そして、お墓を掘り返したら、赤ちゃんが元気に育っていたそうです。
だから、六文持ってきたと言うことは、死ぬ時に、
お墓に一文銭を六枚しか入れてやらないでしょう。
その六枚がなくなったから、
六日経ったら来れないようになったんじゃないだろうかと思いました。
「そいけん、人間は死んでもね、そがんやって子供ば育てようていう、
親の気持ちていうものはありがたいもんねぇ」と言うことです。
それから、妊娠した人が亡くなったら、お腹を割いて赤ちゃんを出した後に
塩水につけた麦をきれいに詰めるそうです。
そいぎぃ、ばあっきゃあ。
（出典 さが昔話 P103）
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