佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)
お婆さんが、お金ば持っとってさい、どこにでん隠すとこがなかわけ。
うち(家)に置いとっぎ嫁さんから盗らりゅうごたっし、また外から、
泥棒が来ても困って思うてさい。
そいぎぃ、そのお婆さんが、あさづけばつけとっわけね。【佐賀でいう、とこづけばつけるわけね】
そいで、嫁さんな、とこづけつくぎにゃあとは、手の臭そうなって言うて、とこづけなつけんけん、
ここがよかろう。て思うて、とこづけの瓶(かめ)ん中(なき)ゃあ、お金ば隠しとっわけよ。
そいぎぃ、隣んにきの家の男の人が、あの婆(ばあ)ちゃんの「とこづけ」は、
ちょっとうまかけんね。
今日は、飯のしゃあ(おかず)の何でんなかけんが、こそっと、
茄子(なすび)の一本もろうてきたっちゃわかんみゃあ、て思うてね、
とこづけの瓶(かめ)ん中ば、こうこうして探しよったぎぃ、コトッて、固かとのあたっもんじゃい、
こうして見たぎぃ、そいが小判やったて。
そいぎぃ、その小判ばね、ねこばばしとったて。
そいぎぃ、お婆さんのいっくら探しても、いっくら探しても出てこんけんね。
そいぎにゃあとは、
「なんでやろか」ち言(ゅ)うて、もう、悲しゅうてたまらんもんじゃい、
「やっぱい、小判も糠(ぬか)ん中(なき)ゃあ入れとっぎぃ、茄子(なすび)てん、
胡瓜(きゅうり)てんに変わっじゃろか」て、言うたて。
そいぎぃ、ばあっきゃ。
(出典 さが昔話 P102)