佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかーし。

 大晦日の晩に爺さんが、どこか行きよったぎぃ、橋の下から何(なん)じゃい声のすって。

 爺さんの、

「今年ゃ、何(なん)で年取ろうかい」ち言(ゅ)うぎぃ、

「米で取んさい、米で取んさい」て、言う声のすって。

 そいぎぃ、

「米てん何てんなかとけなあ、お米のなかけん、何で年取っかいて、俺(おりゃ)、

言いよっとに」て、お爺さんの言わすわけでしょう。

 そいばってん、橋の下から、やっぱい、

「米で取んさい。米で取んさい」ち言うて、聞こえてきたもんじゃい、

爺さんの気になって橋の下に行ったぎぃ、亀(ぐうず)がおったて。

 そいけん、この亀(ぐうず)が言うたとやろかい、て思うて爺さんが持って帰らしたて。

 そいで、その亀(ぐうず)ば持って町さい行って、そいで、

「もの言う亀(ぐうず)」て言うて、触れ回いよったぎぃ、金持ちの人が、

「本当(ほんと)ない、こりゃあ、ちょっと珍しか」て言うて、

お金を出して買わしたわけよね、その亀(ぐうず)ば。

 そいで、金を貰えて、その爺さんな正月のお米ば買えたて。

 そいぎぃ、今度(こんだ)、その金持ちの爺さんが言わせようてしたぎぃ言わんごとなったて。

 そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さが昔話 P85)

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