佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかーし。

二番嬶(がか)さん所(とけ)ぇ、継子と自分の子がおったて。

ある時、継子に椎ば実拾(ひら)いに行かせる時に、自分の子には、良い袋を持たせて、

継子には、穴の空いた袋ば持たせて行かせたて。

そいで、

「椎の実ば、こい一杯拾うてこんにゃあ、帰って来(く)っぎいかんばい」

て言うて、行かせたて。

そいぎぃ、椎の実ば拾いよっぎにゃあとは、上の継子の姉ちゃんのは、

袋に入れとっとのポロポロポロで落ちっもんじゃい、いっちょん一杯にならんて。

下の継子は、姉ちゃんが落としたとば拾うてね、拾うただけで、我んとが一杯になっわけ、

姉ちゃんが落としてくるっけん。

そがんしよったぎぃ、日が暮るっごとなったけん、

「姉ちゃん。私(あたし)は、一杯になったけん帰るよ」

ち言(ゅ)うて、実の子が言うたぎぃ、姉ちゃんが、

「母(かあ)ちゃんから怒らるっけん、一杯になっまで拾うて帰っけんが、先に帰って良いよ」

て言うて、また、拾いよったて。

そしたら、とうとう日が暮れてしもうたもんじゃい、帰っても叱らるっけん、

仕方なか、て思うて、ちょうどお堂のあったもんじゃい、

そこに泊めてもらおうと思うて中に入って行って、

「神様。ここに泊まっていいですか」て、聞いたて。

そいぎぃ、

「泊まって良いけど、夜になったら、ここに鬼たちが出て来てね、

酒飲んだり何たいして騒動すっけんね、びっくいせんごとせんばあ。

そしてね、明け方近(ちこ)うなったら、そこに、甚八と団扇(うちわ)があっけんが、

そいでパタパタパタて、鶏の羽ばたきば真似してね、『コケコッコー』て、言うぎ良か」

ち言(ゅ)うて、教えてくるっわけですね。

そいぎにゃと、夜中になって鬼の出て来たもんじゃい怖くなって、

「もう、良かろうか。良かろうか」て、

屈(かが)んどって明け方に教えてもろうたごと鶏の羽ばたきば真似して、

「コケコッコー」て、言うたて。

そいぎ、鬼が、

「今日は、夜の早(はよ)う明けた。そら急げ」

ち言(ゅ)うて、自分たちが持って来た宝物(もん)は全部(ぜーんぶ)そこに置いて、

帰ってしもうたて。

そいぎ、継子の椎の実は一杯ならんやったばってん、こいば持って帰っぎぃ、

お母さんから怒られはせんやろう、て思うて、その宝物ば袋に詰めて帰ったて。

そいて、帰って来て、お母さんに、

「夕べは、遅うなったけん泊まって来て、すいません。そいばってん、こう言う風で、

がんして宝物ば貰(もろ)うて来たけん」て、言いなったて。

そいぎぃ、お母(か)さんの喜んで、今度(こんだ)あ、自分の子にさせんば、

て思うて、また二人(ふたい)してやんさったて。

そいぎにゃあとは、妹が、

「姉ちゃん、どぎゃんしたね」ち言うたぎぃ、

「こぎゃんやったよ。甚八と団扇(うちわ)ば持って屈(かが)んどって、明け方になったぎぃ、

『コケコッコー』て、言うたぎぃ、鬼が逃げて行ってね、宝物ば置いて行ったよ」て、

言うたけん。

そいぎ、妹は同じごと、お堂の所(とけ)ぃ屈んどったばってん、

宝を貰(もら)わるっと思うとっもんじゃし、ニコニコニコニコして、

そして鬼どんの踊りの面白かもんじゃい、クスクスて笑うてしもうたて。

そいぎ、鬼どんが

「どうも人間臭かー」て、捜したぎぃ、見つかってしもうたて。

そいで、

「こいつが、昨日、俺(おい)たちば騙して宝ば持ってはしったとに違いなか。

こいつに、そこん辺(たい)のがらくたを全部背負わせてやれぇ」ち言(ゅ)うて、

一杯がらくたば背負わせて帰したて。

そいで、妹は家に帰って、お母(か)さんに見せたぎぃ、中は全部がらくたばかいやったて。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さが昔話 P80)

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