佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかーし。

両親がおらんで、兄弟二人(ふたい)残されたてね。

そいて、弟が目の見えんさらんやったわけ。

そいぎぃ、働くちゅうことのできんもんじゃい、お兄(にい)ちゃんな、弟に山芋を取って、

「せっせ、せっせ」と食べさせよんさったわけよ。

そいぎぃ、山芋のとってもおいしかったて。

その弟のひがんでね、

「おい(俺)に、がんうまかとこば食わしよって、

兄(にい)ちゃん、まあーだうまかとこば食いよらすやろー」ち言(ゅ)うて、思うてね。

そいぎぃ、兄ちゃんに言うぎ良かとばね、人に言うたもんじゃい、

兄ちゃんがそいば聞いてね、そがん弟は思うとっとやろか。

美味しいかとこばっかい食わせよっとこりぇ、て思うてね、

兄(にい)ちゃんな、悲しい思いばしとったわけね。

そいで、とうとう弟が、

「兄ちゃんな、山芋の美味(うま)かとこば食いよろうもん。どがんとこば食いよんねぇ」て、言うたて。

そいぎ、兄ちゃんが、

「そがん言うごたっない、俺(おい)の腹ん中ば見てくいろ」ち言うて、

兄ちゃんが、お腹(なか)ば切ったら、そん時、突然、目が見えてね、

兄ちゃんが山芋のつけ根んとこばっかい食うとったとがわかったて。

そいぎ、兄ちゃんは、お腹(なか)切ったけん、そん時、死んでしまうでしょう。

そいで、死んでしもうて、その兄ちゃんが鳥になってね、弟が、かっちゃんて付いとったけん、

「かっちゃんとけたか。かっちゃんとけたか。兄ちゃんのことがわかったか」て言うてね、鳴くごとなったて。

「とけたか」ていうのは、

「兄(にい)ちゃんがうまかとこは食わんで、いいとこば食わせよったていうことが理解できたか」ていう意味。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さがの昔話 P65)

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