佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 むかーし。

親の言うことをぜんぜん聞かん息子のおったて。

お母さんが、「山に行って薪(たきぎ)取りに行ってこい」て言うぎぃ、川に行く。

「川に魚取りに行ってこい」て言うぎぃ、山に行くて言う風にして、もう、いっつもいっつも、お母さんの言うことの反対ばっかいしよったて。

そしたら、そのお母さんが病気になって、

「もう自分の命は、そう長くないだろう」て思うて、私(あたし)の反対のことばっかいするから、

「川の側に埋(い)けてくれぇ」て、言うたこんなあ、

「山に埋けてくるっじゃろう」て思うて、

「お母さんが死んだらね、川の側に埋けてねぇ」て、言うたて。

そいぎぃ、お母さんの死んでしもうたぎぃ、

「俺(おい)は、お母さんの言うことの反対ばっかいしよったけん、

お母さんが生きている間、親不孝ばっかいしたけんが、

最後のお母さんの死ぬ前の頼みやっけんが、

そんない、今度だけはお母さんの言うごとしよう」ち言(ゅ)うて、

お母さんを川の側に埋けたて。

そいけん、お母さんを川ん側に埋けたけん、

「お母さんな、流さるっとじゃなかろうか」ち言(ゅ)うて、

心配して青ビッキィ【雨蛙】に生まれ変わって、雨が降りそうになると鳴くて。

そいぎぃ、ばあっきゃ。

(出典 さがの昔話 P60)

標準語版 TOPへ