小城市牛津町宿古賀 七田ムラさん(明39生)

 そら豆の縁は、黒うしているでしょう。

それには、このような話があります。

むかし、そら豆さんと石さんと藁さんが旅に出たそうです。

ところが、長い長い川があって、橋が一つもなかったらしいです。

それで、

「この川をどんなにして渡ろうか」と言って皆で考えていたら、 藁さんが、

「そんなら、俺(おい)が橋になろう」と言って、

藁さんが川にかかって橋になったそうです。

ところが、そら豆さんと石さんが、

「うち【私】が先に渡っ、うち【私】が先に渡っ」と言って、どっちも譲らないそうです。

それで、

「そんない【それなら】、じゃんけんで決みゅう」と言って、じゃんけんをしたそうです。

そうしたら、石さんが勝ったので、石さんが先に渡ったところが、

重たかったものですから、藁さんがとうとう折れてしまい、

川に落ちて、流されてしまったそうです。

そうしたら、そら豆さんが、一人になったものだから、一生懸命泣いたそうです。

そうして、もう泣いて泣いて、そこらあたりに聞こえるように泣いて、

余りやかましいので、神さんから、

「もう、口ば【口を】縫うてしまえ」と言われたので、

そこら付近の人が、慌てて、白糸ではなく黒糸で縫ってしまったそうです。

それで、そら豆の口は黒いということです。

そいばぁっきゃ【それでおしまい】

(出典 牛津の民話 P80)

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