小城市三日月町本告 中島キクヨさん(大7生)

 むかし、あるところに、親孝行息子がおって、

お母さんが60歳になったので、背負って、

姥捨て山に捨てに行っていたそうです。

そうしたら、そのお母さんが、

お前が帰っ時、道ぃ間違ったら、

本当(ほん)に困るだろうと思って、

柴の枝を1本1本追って、

曲がり角の所に置いていかれたそうです。

そうして、姥捨て山まで来たので、

そこに捨てようとした時、お母さんが、

「お前が帰っ時、困ろうで思うて、曲い角に枝ば置いてきた」

と言われたので、どうしてもお母さんを捨てることが出来ずに、

また背負って、連れて帰って来られました。

そして、自分の家の床の下に隠して、お母さんを養っていました。

すると、隣の国の殿様が、難しい問題を出して来たそうです。

自分の国の殿様を困らせようと思って、

「灰で縄を作れ」という問題でした。

それで、自分の国の殿様が、この難問を解ける者はおらんか?

と言う お触れを出したら、誰も解ける者がいなかったそうです。

それで、親孝行の息子が、床の下に隠しているお母さんに聞いたら、

「縄を燃やして、紙の上に置いて持って行け」と言われたので、

そのようにして持って行ったら、今度は、

「曲がった穴に糸を通せ」と言う難問が出たそうです。

それで、それも、お母さんに聞いたら、

「穴の先に砂糖を置いて、蟻の足に糸を付けて通せ」と言われたそうです。

それで、それも殿さんに持って行って教えたそうです。

自分の国の殿さんは、その答えを隣の国の殿様に言ったら、

もう何も言わないようになったそうです。

それで、殿さんが、その息子に、

「お前に褒美をとらせる」と言いました。

「実は、60歳になったけん、姥捨て山に捨てに行くようになっとった

お母さんを床の下に隠しとったけん、そのお婆さんに聞いた」

と言ったそうです。

そうしたら、殿さんが、

「年寄りは、重宝なもん」と言って、

それから、姥捨て山に捨てさせることを止めさせたという話を聞きました。

(出典 三日月の民話 P146~147)

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