小城郡小城町大日 藤野クリさん(年齢不詳)
むかし。
日でりが続いて、雨が降らなかったので、
田んぼの水もなくなってしまった。
お爺さんは田んぼを見回りに行って、
「ほんに、うちの田んぼだけで良かばってん、
雨を降らせてくるっぎ、良かばってん」と、ひとりごとを言っていた。
蛇があぜ道に出て来て、頭を持ち上げて、おじいさんのひとりごとを聞いていた。
しばらくしてから、蛇は、
「俺が雨ば降らすっけん、娘ばくるっかぁ【くれるか】」と、
お爺さんに言った。すると、お爺さんは、
「うぅん。雨ば降らせてくるっぎ、娘ばやっ」と、蛇に言った。
蛇は、お爺さんの田んぼに雨を降らせた。
お爺さんは、信じられないほどびっくりしてしまった。
お爺さんは、蛇との約束を後悔しながら家へ戻った。
お爺さんは、娘を蛇に取られたくなかったので、
四角四面の堂を作って、その中に娘を入れて隠した。
夜になって、約束していた蛇は、お爺さんの家にやって来た。
そして、蛇は堂をぐるぐる巻きつけ、尻尾で叩きつけた。
娘に助けられていた、かにが、
そのことを知って、仲間を連れてお爺さんの家へ来た。
かにたちは、堂を巻きつけていた蛇の頭から尻尾の先まで、はさみ殺した。
そのため娘は、蛇の嫁にならずに済んだと言うことさ。
そいばぁっきゃ【それでおしまい】。
(出典 佐賀の民話第二集 P157)