小城市三日月町初田 坂田シズさん(明33生)

   親父さんが鉄砲で猟をする猟師だったそうです。

その猟師さんが、ある時、どこかのお宮の後ろで、

鉄砲を構えて、身動きもせず座っていたそうです。

そうしたら、その時は10月だったそうで、

10月は神無月と言って、そこに神さんが集まって、

何か話をしていたそうです。

「どこそこに、子供の生まるっ」

「そこの子は、5つか6つになる時、河童にやる」

ということを話していたそうです。

それで、その猟師さんは、

不思議なこともあるもんだなぁと思って家に帰ってみると、

丁度、自分の所に子供が生まれていたそうです。

男の子が。

そうしたら、その子が5つか6つまでなった時、友達が、

「何とかさん、泳ごう」と言って来たので、一緒に泳ぎに行ったそうです。

そうして、泳ぐ前に、

「相撲とろう」と言ったので、

「ちょっと待っとかい【待っとけ】。

俺(おい)はご飯食べとらんけん、食べてくっけん」

と言って帰ったら、丁度ご飯が炊けてなかったので、

仏壇に上げてあるご飯を食べて戻ってきたそうです。

そうしたら、その友達が、相撲をとろうとしないそうです。

その子供が、仏さんに上げているご飯を食べて来たと言うものですから。

そうしていたら、親父さんがそこに来ていて、

隠れて様子を見ていたそうです。

お宮さんで あんなことを聞いたから、これは何かあると思いました。

それで、子供が泳ごうとした時、

鉄砲で、その友達の子を撃ったら、弾が当たって、

大きい河童になって死んでいたそうです。

それで、

「お産の時はね、家の大将は、おらんばつまらん」ということを聞いています。

(出典 三日月の民話 P116~117)

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