小城市小城町米ノ隈 草野コトさん(明28生)

 ある山寺に、

和尚さんとエエカン、モウニュウ、アチィフという

三人の小僧さんが住んでいた。

ある晩、和尚さんは三人の小僧さんが寝てから

餅を焼いて食べようとしていた。

ところが、焼きたての餅が和尚さんの手に付いてしまった。

和尚さんは思わず、

「アチィ、フ!」と、叫んでしまった。

すると、アチィフという名の小僧さんが、

「和尚さん、和尚さん。何でございましょうか」

と、急いで起きてきた。

「おまえを呼んだのじゃなかったのに。

せっかく起きて来たなら、この餅どん食え」と、

和尚さんはアチィフに餅を食べさせた。

今度は和尚さんはお酒を飲もうとして、

ほど良い燗(かん)がついたので、

「こりゃあ、えぇ燗、えぇ燗じゃと一言って、お酒を飲んでいたら、

「和尚さん、和尚さん、何でございましょうか」

と、急いでエエカンが起きてきた。

「あぁ、おまえを呼んだのじゃなかったのに。

せっかく起きて来たなら、このお酒どん飲め」

と、和尚さんはエエカンにお酒を飲ませた。

それから和尚さんは、二人の小僧に餅を食べさせ、お酒も飲ませ、

自分ひとりで食ったり飲んだりすることができなかったので、

「ああ、もう寝(にゅ)う、もう寝(にゅ)う」と、言われた。

すると、モウニュウという名の小僧さんが、

「和尚さん、和尚さん。何でございましょうか」

と、急いで起きてきた。

「ああ、もう寝ろ。もう寝ろ」と、和尚さんは言った。

かわいそうにモウニュウさんだけは、

和尚さんから何も貰わずに寝なければならなかった。

そいまあっきや。

(佐賀の民話第一集 P122)

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