小城市大手町 高木タミヨさん(大9生)

むかぁし、

あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいたそうです。

そうして、お爺さんが、山で畑を耕していたら、狸が出てきて、

石の上に座って、悪口を言うそうです。

「あの爺やん、右ぃ(みぃぎぃ)行ってギッチョンチョン、

左ぃ(ひいだりぃ)行ってギッチョンチョン」とか何とか

それで、お爺さんは、「コリャー」と言って

追いかけて行くけれども、いつも逃げてしまうそうです。

それで、お爺さんは、狸がいつも座っている石の上に、

鳥(とい)もちをつけていたそうです。

そうしたら、狸は、鳥(とい)もちの付いているのを知らないで、

その石にいつものとおりに座って、

「あの爺やん、右ぃ(みぃぎぃ)行ってギッチョンチョン、

左ぃ(ひいだりぃ)行ってギッチョンチョン」と言っていたら、

「こらー」っとお爺さんが追っかけてきた。

それで、逃げようとするけれども、

鳥(とい)もちが尻に付いているので逃げられないで、

捕まってしまったそうです。

お爺さんは、狸を捕まえて、自分の家に連れて帰って、

土間の中に吊り下げて、お婆さんに、

「狸汁にしとけ」と言って、また、出かけて行かれたそうです。

そうしたら、狸は、土間で米を搗いていたお婆さんに、

「きつかろうけん【大変だろうから】、俺(おい)が変わってやる」て言って、

お婆さんに縄を解かせたそうです。

そうして、お婆さんを杵で叩き殺して、

お婆さんの着物を着て、お婆さんに化けて、

お婆さんを煮て、婆汁にしたそうです。

そうして、お爺さんの帰ってきたら、

「狸汁よ」と言って、お爺さんに騙して食べさせたそうです。

そうして、最後に、お婆さんの骨を棚の上に隠しているので、

「棚の上の物(もーの)見ろ」と言うたそうです。

お爺さんは、お婆さんは何(なん)ば言いよっかにゃあ、

と思うて、棚の上を覗いて見たら、お婆さんの首があったそうです。

それで、驚いて、「こりゃー」と言って追いかけたけれども、

狸は、ドンドンドンドンと逃げて行ってしまったそうです。

それで、お爺さんが、悲しくて泣いていたら、

兎が出て来て、そいから先はカチカチ山のとおりになったそうです。

(出典 小城の口承文芸 P23~24原題:33 カチカチ山)

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