小城市小城町桑鶴 円城寺初三さん(明37生)

 徳川三代将軍の頃に、佐賀の鍋島藩に、

金剛院と言う家老さんがいらっしゃったそうです。

その家老さんが、毎晩、天山の上宮に参拝されていました。

ところが、ある時、中宮まで登った時に、

前から、綺麗な女の人が子供を抱いて歩いてきて、

「子供が泣いて可哀想だから、ちょっと間、抱いといてくれんか」

と言って、金剛院さんに預けて、どこかに行ってしまったそうです。

金剛院さんは、仕方がないと思って抱いていたら、

その子供がだんだん重たくなって来るそうです。

それでも、我慢して抱いていたら、

その女の人が、しばらくして帰って来て、

「代わりに、お前に力を与(あた)ゆっ【与える】」

と言われたそうです。

そうして、金剛院さんが、上宮に参拝を済ませて、

家に帰って来て、手ぬぐい【タオル】を絞ったところが、

すぐブッと切れるそうです。

何度やっても、ブッ、ブッ、ブッと、すぐ切れるそうです。

それは、あの中宮さんが、金剛院さんに、

「力欲しかない、力をお前に与える」と言われたそうです。

それで、

「中宮さんと言う神さんは大したもんだ」と言うことになって、

今でも崇められているということです。

 

(出典 小城の口承文芸 p97~98 原題:13 天山神社の中宮さん)

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