小城市小城町永岡小路 安岡美千代さん(生年不詳)

語り おはなし会三日月 飯守容子さん
昔、永岡小路いいおかこうじにお金持ちの長者がいて、

多くの下男下女を使っておりましたそうです。

その中に、お菊と言って、

心も姿も美しい主人のお気に入りの下女がおりました。

ある日のこと、この長者は、家宝の皿十枚の保管をお菊に頼みました。

お菊は大事にしまっておきましたが、そのうち、

他の下男下女の中に、お菊の身の上をねたむ者があって、

こっそり、金の皿一枚を盗み取り、お菊をおとしいれようとしました。

悪い下男下女は、主人に向かって、

「あのお皿をお調べなさいましては」と申し上げました。

長者は、まさかと思いましたが、

すぐにお菊を呼び出して、目の前で調べさせました。

何も知らぬ正直なお菊は、一枚二枚と数えていく間に、

九枚まで来ると、どうしたのか、十枚あるはずの金の皿が一枚足りません。

お菊は何回も何回も繰り返して調べましたが、やっぱり一枚足りません。

お菊は泣きたいような気持になりました。

そのうち、長者の顔はさっと、きつくなり、

重い責任を破ったと言うことで、無実の罪とは言いながら、

憐れにも井戸に連れて行かれ、上から吊られて、

井戸の中に落とされてしまいました。

それから、その井戸の中からは毎晩のように、

一枚二枚と八枚までは正しく叫び、

九枚になると悲痛な叫び声が聞こえるようになりました。

こうしたことがあって後、憐れなお菊のたましいを慰めるために、

井戸を埋めてその上にお地蔵さんを建て、

ねんごろにお祀りされたそうです。

 

(出典 小城の口承文芸 p117 原題:68 皿屋敷 地蔵屋敷)

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