東津 寺田次男さん(明37生)
ある人(ひっ)たんがその、山伏のごたって、
ぶんげっち、昔からあいよったろうが。
あいば持ってずうっと、
直代のあっこから東の方さい戻って来よったもようたい。
そいが、あつけぇ、
三十六(さんじゅうろく)ていう所のあんもんね、場所の。
そこの田ん中んにきで、その、野狐が、
堀(ほい)の泥ん中(なけ)ぇ昼寝(ひんね)しとったもようたい。
そいぎぃ、俺(おり)ぁあ、
こいばびっくいさせてくるっかねぇと思うて、
その、坊(ぼう)さんじゃろうだい。
その人のぶうおんげぇ持って行たて、野狐の耳んすう持っていって、
「ブーッ」て、吹いたらしか。
そいぎぃ、野狐がびっくいして跳び上がって、ちん逃げたちて。
そしたや、そのあくる日、またそこば通いよったら、
その昨日の坊さんが畔道ば、
ずうっと這(は)うて行きないよっちゃんなたあ。
畔道を這うて行きよっじゃ、何(なん)しよっじゃっけんと思うて、
「お前(とん)、何しよっかん。そけぇ」ちて言うて。
「松の木のこけぇ、太かとのあっけん登いよっ」ち。
その野狐から仇討ちされとっもようじゃん。
松の木見(めぇ)かかったもんたい、畔道が。
(出典 三根の民話 P186)