東津 石井良一さん(明35生)

 あるところに息子さんが生まれたて。

非常に長生きするようにと思って、

名前を何と付けたらよかろうか、

と言(ゆ)うので、昔の人が付けたように、

太郎左衛門、何々之介というように考えてみた。

そいでもまだ短かと。

「爺さん、爺さん。何と付けたらよかろうかあ。

私も大抵四、五日考えよったばってん」

「婆さん、しまい思い出したじゃ」

「どぎゃんかい」

「こうじゃんね。ようっと覚えときございよ。

テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャクイクヨンドン」

「うん。そやよかばい」

そうすっと、しまいその名を付けたわけ。

そうしてまあ、三つくらいまではよかったわけですよ。

そうして、わがまえどんどん歩くごとなた。

ところが、ちょっと目しからん。

そいで叫(おら)ばならん。

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャイクヨンドン」て、叫びよらす。

何処行ってもおらん。また向こうに行たて、

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャイクヨンドン、やあーい」て、

叫(おら)ばすばってん、おらん。

そうして、なにげなく裏さい行ってから、

井戸にどん入っておんみゃあかない、

と思って、見たぎ入っとったて。

そいで、その隣に教えんばらんて。

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャイクヨンドンさんな、井戸ん中に入んなさったあ」

今度こっち隣の家に教えんぼ。

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャイクヨンドンさんな」て、叫(おら)ぶ。

そしたら、また隣に、

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャイクヨンドンさんな、

井戸ん中に入んさったあ」て、叫(おら)ぶ。

そうして、そんない三間縄梯子ば借っていたて、

梯子を入れて救ってみたら、とうとう死んどったて。

そいでもって、こいはてたていうわけ。

そうすっとまた、後で生まれたて。

「ありゃあもう、こいはてたけん婆さん、

短か名ば付けきゅうない。そいがよかろうばい」て。

「何て付くっかんたあ」

今度、「チョキ」て付けたて。

たった、そがしこ。

「チョキ」て。

(出典 三根の民話 P177)

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