東津 石井良一さん(明35生)

 お嫁さんをもらいに行った。

「ぜひ、ひとつお宅の娘さんをくいてくんさい」

「いんにゃ、家(うち)んたあ、でぐのぼうじゃん」

どうしてもくりゅうでせん。

ほんに見たところきれいで、体格もよし、もの言うても立派なもん。

「そいじゃ、是非とも欲しかけん、息子の嫁に来てください」

て、言うたわけ。

「なしかんたあ」

「そりゃあ、あの、ほんにおかしか話ばってん、

家んたあ、その、ちった屁ふんもなたあ」

「そりゃあ、よかですよ。

誰でんそりゃあ、ガス出ん人間なあなか」

て、言うわけ。そいで、

「そいないば、屁ばふってもよかないやろう」

て、言うてその、とうとうもろうたて。

くいたわけですね。

ところが、ちょうど大根どきでその、

もろうた嫁さんが仕事しよっ時、急に出てくうごとなった。

そいぎその、

「父(と)ったん、お母さん」

「ないかん」

「私ゃ、約束のごとじゅうごたっ」て。

「よかよか、出たってよかけん」

「そいな、ただじゃでけん。

大根でんよかけん、つかまえてくれんかんたあ」

「ふうけたごと言いやんなあ。

そがんこといんもんか。人間の」

「そぎゃん、おとんの言うないつかんでみゅうだい」

ところが、やったところが、太さもう太さで、

大根ばつかまえとったばってん、大根も引き抜かれたて。

その次の大根ばつかまゆっばってん、そいも抜け、

その次の大根ばつかまゆっばってん、そいも抜けたて。

ずうっと、大根な抜けてしもうたて。

こう言う話があるわけですね。

(出典 三根の民話 P171)

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