東津 寺田次男さん(明37生)

 鰻(うなぎ)の話ば、ちょっとばかいしてみゅうかなたあ。

その人の爺さんのくさい、おいなったもよう。

ほんにちょっと、夜中の十時じゃったたい。

鰻ば取いないよったもん。

そいぎぃ、その人の所(とこ)さいはんぎいっぺいその、

鰻ば取ってきて夜(よ)さいにいけてあったもようたい。

そしたぎと、誰(だい)じゃい鰻ば買いに来たちて。

「鰻あっかーい」ち言うたりゃ、

「鰻はなかー」ちて、その、中から叫(おろ)うだもようたい。

そいぎその、今んたどうじゃい声の違うたねぇ思うて、

怪しかったもんじゃい、またわざわざ起きぇて、

家(うち)の者(もん)な、もう、寝とったて。

そいばってん、あの、その他(ほか)から起こしたもんじゃい、

起きてみなったりゃ、鰻どんがはんぎ一杯(いっぴゃ)頭持ち上げて、

「鰻ゃーなかー」ちて、こいどん叫びよったもんたい。

そいぎぃ、宗八さんたちが、

「まあ、今夜(こんに)ゃもう売れっしもうた」て言うて、

もう、戸は閉めて寝なったちゅう話。

(出典 三根の民話 P169)

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