向島 平 ミツエさん(大8生)

 お酒に、桃の節供ち言(ゆ)うて、

女はどうでんこうでん桃の花をそれにさして。

そいぎぃ、こやねぇ、むかしねぇ。

あの、もう、良か娘さんのおんさったちて。

そうしたぎもう、夜な夜な良い男が来ってぇ。

そしたぎと、妊娠したでしょう。

「あら、妊娠して、あの男(おとこし)は何処の人やったやろうかあ。

もう吟味して、どげんすっぎよかじゃいけん」ち、

言いないよったぎぃ、

「その男が来た時、そんないねぇ、こいば、あの、

帯の所こっちゃい何処こっちゃいわからんごと、

そーっと、糸ば針(はい)にちょっと付けて、抜いとけ。

そいぎと、そして糸ばずうっとたぐって行くぎと、わかっ」ちて。

そいぎぃ、後からずうっとたぐて行たぎと、洞穴ん中に、

「あの、俺(おや)、こげんしてどっさい、

もう子供ば持っとっじゃん、そいけんね、ばってん、

桃の節供になって桃酒飲むないば流れてしまうじゃん。

そいけん、ほんにそげんとば知らんぎよかばってん」ち、

その話よっとば聞いてあったわけぇ。

そいもんじゃい、帰って来てその桃酒ば飲ませたぎと、

最初の子供流れてしもうたちゅう。

そいけん、桃酒ば飲まんば、ち言うて、飲ませないよった。

そいばあっきゃ。

(出典 三根の民話 P162)

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