打ち出の小槌

打ち出の小槌

新村 (語り手・年齢不詳)

 むかしはなたあ。

大黒さんの小槌ば持っといなったけん、

そや、支那のことやんなたあ。

ところが、小槌ばなたあ、叩きんしゃりゃ

大判なら大判、小判ち言うない小判ち、米ち言うない米の、

よう出よったちなたあ。

わが願いの物ば、トントンち、叩くぎにゃあ。

そうしたところが、ずうっとそいばしよったところが、

いっちよん難儀せんじゃい。

小判ち言うない小判。

小判ち、こう叩くない、じゃあじゃあ出て。

大判ち言う言うぎぃ、大判のじゃあじゃあ出て。

米ち言うぎぃ、米どっさい、どっさい、ち出よった。

そうしたぎぃ、米の幾らでん出(ず)ったよかったばってん、

片付けやなんみゃあが。

そいけん、米の入っとる倉を思うてなたあ、

「米倉、出ろ出ろ」て、ポンポンち、こう叩いたちなたあ。

米倉じゃろうが、米の入っとっ倉じゃんなたあ。

「米倉、出ろ出ろ」

ポンポンち、叩いたところが、こうまか盲人の幾らでん出た。

そいぎぃ、

「こりゃいかん」ち言うて、

叩き割ってうち割ったもんじゃ、今もうなかたんたあ。

(出典 三根の民話 P133)

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