三養基郡みやき町(旧北茂安町)中津隈 原 七三さん(年齢不詳)

 あるところのお寺に、和尚さんと小僧さんが住んでいた。

和尚さんは、壺に飴(あめ)を入れて小僧さんに舐めさせず、

自分ばかり、こっそり舐めていた。

ある日、和尚さんが小僧に、

「こりゃ、毒の入っとっけん、ひねくっごとは【さわっては】ならんじゃ!

取ることはならん」と言って、法事に行った。

小僧さんは、和尚さんが壷の中の飴をこっそり、

美味そうに舐めていたことを知っていた。

だから、この時ばかり和尚さんの留守に、飴を舐めてしまった。

そして、その壺を小僧さんは割ってしまった。

夕方になってから、和尚さんは法事先から戻って来た。

ちょうど、その時、小僧さんは泣き真似をしていた。

和尚さんは、その様子を見て、びっくりしながら、

「なぜ泣きよっか?何したか?」と小僧に聞いた。

「あなたが大切にしとんさった壺ば割ってしもうたけんが、

その中に入っとった毒ば舐めたばってん、死なん。そいけん泣きよっ」と、

小僧さんは和尚さんに嘘を言った。

欲張りな和尚さんが小僧さんに騙されてしまったと言うことさ。

(出典 佐賀の民話第二集 P39)

標準語版 TOPへ