三養基郡基山町 梁井ヤエさん(年齢不詳)

 むかし。

あるお寺に、和尚さんと二人の小僧さんが住んでおったげな。

ある日、和尚さんは法事に行った。

その帰りに、餅やら何やら、いろんなみやげ物をもらってきていた。

しかし、和尚さんは二人の小僧には、

何も食べさせないで自分ばかり、いつもこっそり食べていた。

ある日、二人の小僧さんは名前を改めることを担談した。

一人の小僧さんの名を「もうやけた」と付けた。

もう一人の小僧さんの名を「まだやけん」と付けた。

そして、小僧さんは和尚さんに、

「私の名前を、『もうやけた』と、改めたけん」

と言った。もう一人の小僧さんは和尚さんに、

「私の名前を、『まだやけん」と、改めたけん」

と言った。

その晩、和尚さんは二人の小僧は寝てしまったと思って、

こっそり餅を焼きはじめた。

和尚さんは、

「まだ焼けん」と、独り言を言った。すると、

「まだやけん」という名の小僧が、

「はい、はい」と起きて、そこへやって来た。

そして、餅を食べることができた。

しばらくすると、和尚さんは、

「もう焼けた」と言った。すると、

「もうやけた」という名の小僧が、

「はい、はい」と起きて、そこへやって来た。

そして、餅を食べることができた。

和尚さんは今までのように、

自分ばかりは食べられんようになったとさ。

(出典 佐賀の民話一集 P56)

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