三養基郡上峰村切通 鶴田勝次さん(年齢不詳)
むかし。
日本に仁王という力持ちと
支那に賀王というカ持ちが住んでいた。
ある時、賀王さんがはるばる船に乗って
力較べにやって来ていた。
それを知った仁王さんも船に乗って
負けてはなるものかと、カ較べに出かけた。
船と船が出合う前に、
賀王さんは仁王さんの乗っている船をめがけて碇を投げ、
引き寄せようとした。
仁王さんは碇を自分の船まで投げるカがあるなら、
これは自分の力では到底およばないと思い、鎖を切り離してしまった。
賀王さんは、
「仁王ちゅうぎ、こぎゃな鎖ば切るごたっ力なら、
こりゃあ恐ろしか。会わんで力較べはせんがよかばい」と、逃げてしまった。
それからというものは、日本は
「賀王出せ」と言い、支那は
「仁王出せ」と、言うようになったげな。
(出典 佐賀の民話一集 P52)