三養基郡みやき町(旧三根)東津 石井良一さん(年齢不詳)

 むかしむかし。

あるところに男の子が生まれました。

爺さんと婆さんは長生きするようにと、

名前を何と付けたら良いだろうかと、

いろいろ考えていました。

「太郎左衛門と考えてみた。それでも名前がまだ短かか。

爺さん、爺さん、名前は何と付けたらよかろうか。

私も四、五日も考えよっばってん」とたずねました。

しかし、良い名前は浮んで来ませんでした。

それから、一週間も過ぎてしまいました。爺さんは、

「婆さん、婆さん! しまい(やっと)思い出したぞ」

と言いました。婆さんは、

「どぎゃんかい。爺さん」とたずねました。爺さんは、

「こうじゃ。ようっと覚えときございよ。

テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチヤクイクヨンドン。

この名前じゃ。これなら長生きしゅう」と言いました。

婆さんは、

「こりゃあ、よかない【いいね】。もう一回、言うてんござい」

と言いました。爺さんは再び、

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャクイクヨンドン」と言いました。婆さんは、

「うーん。そやよかばい」と答えました。

そして、その名前を付けたのです。

その子供は三つぐらいまでは、何事もなく無事に育ちました。

ある日のこと、子供がいなくなりました。

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャクイクヨンドン」と

呼ぴ回って、あちらこちら探しました。

もしかすると裏の井戸に落ち込んではいないかと思って、

のぞいてみたら子供が溺れている。

「テンタコ入道タコ入道 屋島国ノ長屋ノ別当ケイゾウ院

チャワンチャクチャクイクヨンドンさんな、

井戸の中に落ち込んどんさったんたあ」と、

隣りに教えました。

隣りから隣りにその名前を叫んで教え回しました。

そして井戸へはしごを持ってかけ渡し、

子供を助けあげた時は、

もう手遅れで子供の息は絶えてしまっていました。

爺さんと婆さんは子供が死なれた悲しみにあけくれました。

そしてまた、数年後に子供が生まれました。

爺さんは前の子供を死なしていたので、

「婆さん!ありゃあ、こいはてた(こりごりしてしまった)。

短かい名前ば付きゅうない」

と言いました。婆さんも、

「そいがよかばい」と言いました。婆さんは、

「爺さん、何て付くっかんたあ」とたずねた。

いろいろ相談の結果、今度は「チョキ」と名付けました。

そいばあっきゃ【それでおしまい】。

(出典 佐賀の民話一集 P47)

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