神埼町横武 馬場崎タツさん(明12生)
むかし。
侍さんの三年江戸づめにないよったて。
三年江戸づめになってその、ほんに
悋気(りんき)深かった殿さんじゃっだろうなたあ。
そけぇその、家来のほんに良か家来のおったぎぃ、
「お前、ずっと番しとってくれろ」て。
そして、
「この嫁御ぱ番しとってくれろ」ちてなた。
そいぎぃ、番しとらんばならんもんじゃなたあ。
帰ってきなったいば、腹の太っといなったて。
そいぎぃ、旦那さんの上酒ばばん、上酒好きじゃったけん、
買(こ)うて帰っといなったてじゃんなたあ。
そいばってん、そがん腹太かったけんその、癇癪(かんしやく)出(じ)ゃあてなた、
前の韮畑(にらばたけ)に捨てなったて。
そいぎにゃあとは、
「あんたも、そぎゃん言うたっちゃ、生まれてから、あの、そぎゃん言うてくんさい」て。
「そいけん、ずっと、あんたの留守は留守番してあの、手ば被せて寝よった」て。
「そいけん、手ばっかい生まれた」て。
そいでなた、また、そぎやんとば聞いてもう、旦那さん、前の韮畑から酒ば手に人らしたて。
また、上酒が出たて。
そいけん、親切は韮の葉ちゅう。
こいばっきゃあ【これでおしまい】。
(出典 未発刊)