神埼町本堀 香月今朝一さん(明42生)
とにかく、ここに野狐捕いがおったて。
そいぎなた、野狐捕いがおったぎとその、ごっとい、
そ奴が野狐の仲間ば、あの、おっ捕いやたぐんもんじゃい、
一遍なっとん野狐捕いば騙さんばらんと思うてなた。
野狐捕いが出て行きよったもようたんたあ。
そいぎぃ、その野狐補いが出て行たもんで、
そいが立派(じっぱ)な女子(おなご)になってなた、化けて。
そして、こりゃあ、ほんに良か女子ねぇと思うて、つんのうて行たてなた。
何処さい行くじゃいきゃんと思うた。
そして、祝儀のあいよったちゅうわけたんたあ。
そいぎぃ、祝儀のあいよったもんじゃから、野狐捕いは騙されともんじゃい。
そいぎぃ、ぎゃなよか女子おったどがん、
誰(だい)じゃいきゃんちゅうごたっ風でなた。
その、戸ばじいっと開きゅうですっばってん、なかなか開からんてっちやん。
そいぎんとその、開からんもんで、一生もう、力まかせ開けたもようたんたあ。
そいしたいぱ、馬の尻(しん)のすの、馬の足じゃったて。
そいぎぃ、こいどんが、野狐が仇討ったちゅう話たんたあ。
そいぎ今度(こんだ)あ、野狐捕いがもう、ぞうわきゃあてくさんたあ、
あの、もう、堤になた、ぬっかごと、その堤ば見せかけてなた。
そいぎ、野狐どんが、
「今日は、ほんに汚れとっけんが、尻のすなっとん洗(ある)わじゃこて」
て、洗(あり)ぃよったいば、もうそのまま余(あんま)い気持ちの良かったぎとなた、
つん寝って凍っとったもようたんたあ。
凍っとったもんじゃい、朝行たて、逃ぎゅうでしたとこが、
その、結局、逃げられんもんじゃい、野狐捕いがすっぱい拾うて、取って行たと。
そいで、野狐捕いが今度あ仇討ったあ。
そぎゃな、ふうけた話どん聞かされよったばんたあ。