神埼町馬郡 福田繁太郎さん(明32生)
むかしその。
狐が子供を産む時その、人間に化けていたそうです。
そしておどんが、産婆さん迎えに行きよったら、
「ひとり行きよっですか」と、じき叫(おら)びなんもんね。
「二人行きよっ」て。
どうでんこうでん、産婆さん迎えに二人で行きよった。
ふたりで行かんない、来んさなかもん。
そがんことがあったから。
そいけんが、
「ひとり」と言うなら、来よんさんなかった。
「二人」と言うと、ごそっと起きて来よんさった。
[大成二八六 狐のお産cf.AT一六五B]類話
(出典 未発刊)