神埼町伏部 木村勝喜さん(明37生)

  欲望の子供と、またちょっと

そう欲望なか子供と二人(ふたい)その、

椎拾いぎゃ行たてね。

そしたら、そのどっちも袋を小さな袋を

下げて行ったでしょう。

ところが、その欲のない子供の袋は、あの、

立派(じっぱ)か袋やったが、あの、

欲望んとはこう、何か下に穴がほげて

おって、拾うても拾うて溜らんらしいやったですね。

そうしたら、その余(あんま)い

日暮らししたもんじゃ、もう家(うち)に、

やっぱい帰きらじぃ、小(こう)まかその、

あの、地蔵さんか観音さんぐらいな家があったでしょう。

そこはその、そいがあの欲望の子どんがそこへ泊まった。

そこは泊まる時に観音さんか、お地蔵さんかに、

「お地蔵さん、今夜だけは泊めてくれんか」て。

「泊めてもよかけれど、その、そげぇ泊まんなら

そこは何時(いつ)も鬼の出て来っぱい。そいでその時はね、

『コケコッコー』て、言うぎとにゃ、

鬼はもう夜が明けたから、すぐ逃げていく」て。

ところがその、そのまた翌日行って、

また日暮らししてきても溜らんで、

「まあ、今夜だけもういっちょ泊めてくれんか」

「そやまあ、今夜もよかけんが、どうかその、お前(まい)また、

『コケコッコー』と言えや」て、こう言うたらしい。

ところが、そのまた翌日行ってから、

もうちょうど渡とったら、やっぱい時間のきて。

音、丑三つ時ちゅうかなんかに。

ああ言う時分に鬼が出てきたらしい。

ところが、

「コケコッコー」て言うたら、あの鬼が逃げよったもんでその、

その欲望の子どんが、

「ぇへぇ」て、こう笑(わる)うたもよう。

「あっ、逃げんか」ち言うて、その、いち食われたち。

そいばっきゃあ【それでおしまい】。

[大成二一二 票拾い AT四八〇]類話

(出典 未発刊)

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