神埼町竹原 佐藤キクさん(明24生)
横尾ノブさん(明32生)
お母さんのその、子供連れて行たとんさったじゃろう、畑に。
そうしたぎぃ、そりゃあ上から舞(も)うてきて、
あの、鷹が連れて走ったじゃろうなたあ。
そいぎぃ、お母さんは、走っても、
とてももう、どがんしゅうもなかったろうだんたあ。
連れて走られて。
そうしたぎとは、あの、何処じゃい、落としたかんたあ、予供ば。
そうして、その人(した)んは、お坊さん蛇いなっとんさろうもん。
そうして、もう、片袖ば持って、お母さんの尋ねて行きなって。
そいでしまい、あの、子供さんと会いんさったじゃいたい。
そいがなたあ、何処かのお寺に、お勤めのあいよっ時ねぇ、
そのお母さんが、そこに、ごっとい、一週間ない一週間、
片袖持って詣(みゃ)あんさってっじゃん。
そうして、わが子の着物と、会えるないばちゅうごたっふうでなたあ。
そして、そぎゃんなたあ、お説教でお坊さんがなたあ、
「この人はその、片袖なくしとって。
そいけん、鷹から攫(さら)われて来とっけん」ち言(ゅ)うて、
話しんさった時、門前にそのお母さんがおんさったてたんたあ。
そいぎぃ、ハァと、思(おめ)んさったもんじゃい、
飛びかかってそのお坊さんに、お話しぎゃあ行きんさったもようじゃん。
そうしたぎその、片袖とその着物ば着とんさっとと、
とがつくいしたてったんたあ。
そいぎぃ、この人じゃろうちゅうごたっ風でね。
そうして、そぎゃんして寄せて、
そこのお寺でお坊さんになって、出世しんさったち。
[大成 一四八 鷲の育て児]
(出典 未発刊)