神埼町平ヶ里 三井所龍太郎さん(明30生)前その、

 ほんに下手くそのお医者さんのおいなったち。

そしたぎにゃあ、熊さんちゅう人の、

熊さんの嫁さんな、おタケさんち言いやった。

その下手くその、お医者さんの、

「お前(まい)、暇ないば家(うち)のあの、おタケが、

ちょっとないした けんが、お前牛ば、ちょっと見てくれんかい」

ち、言うたち。

「うぅーん、そりゃあ、俺(おり)ゃあ、回って来っけん、見ゆうだん」

ちゅうて。そいぎ、その人が来て、

「おタケさん、何処(どけ)ぇ行たてやっかい」

ちて言うて、そのお医者さんの来らした。

ところがその、おタケさんは、お竹さん違いじゃったらしかもんなぁ。

ところが、裏のやぼの竹が悪かったらしか。

そして、お医者さんの来なったもんじゃい、

「あんたぁ、来てくいたない、ちょっと、こい、見てくんさい」

ちゅうて、裏ん口さい誘う(さす)うたちゅうもんない。

そいぎ、お医者さんな、この人は裏ん口さい連れて、

何(ない)すっじゃいかんと思うて、つんのうて行たいば、竹やぼが

(がじにゃあの入って、)枯れかかとったて。そいぎ、

「おりょう、おとん、こやぁ、この竹ば俺(おい)言うたっちゃ、

おタケさんの痛うどいやっと思うて行たいやぁば」

「いんにゃあ、この竹たい」

「そりゃあ、おれぇ言うたっちゃ、そりゃあ知らんぜぇ」

ちゅうて。そいばってん、

「やぼ医者、やぼ医者」言うて、そいぎんにゃあ、

「こん畜生(つきしょう)、うんがそがんごとこきひゃたげて」

ちて、手ば、ほいやげたちゅうもん。

そしたぎにゃあ、

「ああよか。お前の手でしてくんさんな。足で蹴ってくんさい」ちて。

「お前の手かかって助かった者(もん)ななか」ちゅうて。

(出典 未発刊)

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