神埼町駅ヶ里 荒木常市さん(明28生)
一休さんに、ある人がその、一休さんに
「極楽ちゅうもんな何処(どこ)にあんもんじゃろうか」
ちて、聞いたて。そいぎ、
「ちょっと待っとれ」ち。
「人が死んでからなになるか。どがんなるじゃろうか」
ちて、こう聞いたち。そいぎ、
「ちょっと待っとってくいろ」ちて、言うてその、わが書斎さい行たて。
そして、過去帳ば出して来らしたて。
そうしたところが、そいば読みあげさすて。
そいぎ、その読みあげさしたとが、
「お布施が幾らの、カンピョウが幾ら」
ちゅうごた風になっちて、
「こういう風になっ」ちて、示さしたて。
そう言う風なことば言わしたて。
そいからその、
「極楽は何処(どけ)あっじゃろうか」ちて、
言うて聞いたところがその、極楽は百万億土の西にあり、
とてもひかれぬ草鞋(わらじ)一足て、言わしたて。
そがん言わしたところみると、
「そがん遠かところじゃろうか」ちて、
言うたぎなんと、極楽は西にもあり東にも
来た道探せ南にもありて、言わしたて。
言うごた風なことを聞きよった。
極楽と言うものは、何処(どけ)ぇもなか。
自分の身にあっと言うことを教えさしたと、
言うごた風なもんたんたぁなた。
(出典 未発刊)