神埼町利田 納富ミヨさん(明22生)
嫁さんがね、
お寺に、ほんに詣いんよんさったて。
そいばってん、姑さんが
詣いんさらんやったてつちゃんね。
そいけんが、姑さんがもう、
ずっと詣なんさっけんね、詣いらせんごと
自分がお寺に詣いって帰って来んさっ時ね、むかし言(ゆ)うぎにゃあ、
こう山のごたっ所からね、
出て来て邪魔して、あの面かぶっておどして出て来よんさったって。
そいぎその人がね、もうびっくりして、
あぎゃんとしんさっと思うて、
あぎゃんとしんさったて。
そいばってん、お寺に詣いよんさったけんね、
ひとつも恐ろしがらんでね、嫁さんが、
「南無阿弥陀仏」ちゅうて、お経を唱えてね、
あぎゃんとしんさったて。
そいぎ、いっちょでん、あの、
怖(え)っしゃもしんさらんじゃいね、
あぎゃんと、そのお母さんがね、
お寺に詣いったらぎゃんあがんと、
怖(えず)うでんなかじゃろかと、
思うてね、面ば取ろうでてしたところが、
顔に、しっついて取れんじゃったて。
そいけんがね、もうそいからまた、
その婆さんもね、
詣いことなんさったちゅう話。
(出典 未発刊)