神埼町利田 陣内寅一さん(27)

 むかし、むかしなあ。

(さっ)どんと蟹(がい)どんと

おったてたい。そしてその、

蟹どんなその、また来よったて。

そいぎ、猿どんな、柿の木登っとったち。

そいぎにとは、猿どんがその、下りてきて、猿どんにまま炊きよったけん、

「ままくれんか」ち。

そしたぎ、蟹どんがその、

「ままないば」ちて、ままばくいたと。

そしたら、猿どんが、

「柿ば、ちぎってくる」ちて、

言うて木に登って、ゴソゴソと登って、

しゅうれんばわが一人(ひとい)食うて、

もう、いっちょでんその、蟹どんに、

「飯俺がくれたばってん、くれん」て。

そいぎ、そしてもう、くれんもんだから、

まあ、蟹どんが、

「なしくれんかあ」て言うて、

言うたぎ にゃあたあ。

青かと、わがうれたと食うて、

青かとばもう、蟹どんにもう、

(しちゃ)あおったい、

侍っとっとこれもう、ドンドン投げして、

もう、ほんに蟹どんばもう、たちやたて。

そいぎい、

「下()りてどんくっぎじゃあ」て、

蟹どんが下(しちゃあ)待つとったあ。

()りて来たけんが、下りて、

ちょうど下りよっとこれ、

猿の尻尾ばもう、蟹のはさいで

チョキッとこう切ったて。

そいけん、猿どんの尻は、真っ赤しとろうが。

そして登(のぽ)っとっ時ほら、

真っ赤にしっちょんちょんちて言うちてね、

言いよったもん。

「俺いっちよくれんかん」ちて。

「よかろう」ち言うぎにゃ、

「いやぼう」ちて、言うちて言いよったも んね。

[大成 二四 猿蟹柿合戦 cf.ATc

(出典 未発刊)

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