神埼町石ヶ里 石松ノブさん(明34生)
親孝行の息子じゃろうが。
親孝行の息子、ほら、むかしは
婆捨て山に捨てにゃらんやったとば、
もうちょっと捨てきらんじ、
目を忍んでそいが、床(よか)ん下に
かくもうとろうがぁ。
お母(か)さんばなた、そして、
ある日のこと、お殿さまから
「灰で網ばなえ」て
言んさったてやっかんたあ。
息子が私案あくばって、
ほんに灰で網ば、なわるじゃろうか
て思っとたぎと、床(よか)ん下におった、お婆ちゃんが、
「わらで縄ば、のうて、そいば燃(む)やせ」て、
「そいぎ、立派な灰の出来(く)っ」て、
そのお婆ちゃんの教えんさったてじゃんね。
そいから、年寄りを婆捨山て何のかんのに
捨つこたなんて。
このお母さんがおったればこそ、
その、そぎゃんなことのわかったけんて。
そいから、婆捨て山に捨てること止(や)まった話。
(出典 未発刊)