神埼町尾崎西分 山本秀次郎さん(明17生)

 どうしたっちゃ、七十から上は姥捨山に行きよったち。

子供が姥捨山に連れて行きよったて。

そいで、荷(い)なわれて行く、お婆さんが落とすもんじゃいその、

「お前はその、なしそがんすっかぁ」て。

「お前(まい)、帰ろうでかい」て、こう言うたもようじゃん。

「なぁーい、あたいが帰ろうでじゃなか」て。

「帰ろうでて思わんばっってんが、

お前(まい)が道ば、間違わじ帰えごとと

思うて、ぎゃんしときょうとして、

そのお婆さんが言うたちゅう話じゃんなぁ。

そいでまぁ、姥捨山捨てきらじ、連れてはち来たてっちゃんなぁ。

そいばってん、連れて来たっちゃその、近辺の目が済まんけんがその、

床(よか)ん下ば穴掘って、お婆さん一人(ひとい)

床ん下(しゃ)ぁ、ずうっと隠(かき)ぃーとっゃたちゅうわけたいなぁ。

そうして、隠(かき)ぃとったところが、あぎゃんたぁ、昔のことばその、

知っとん者(もん)がちょっとなかもんじゃなぁ、

そいでその、昔のことばにゃあごとか、聞かんまことのあったもようたいなぁ。

そいで、

「知らんか」ちゅうて、大抵言うてしたところが、

誰でん知らんばってんその、そのお婆さんが者の話ば、

して聞かせたもようたいなぁ。

そいからが、そのやっぱい年寄(としよい)のおらんば

できんちとごゅうごとになったちゅうわけたいなぁ。

(出典 未発刊)

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