神埼町石原 城野テルさん(明27生)
猿(さっ)どんと蟹(がっ)どんおらしたてっちやん。
そいぎね、あの、猿どんが
柿の種じゃろう柿の種ば持って。
蟹どんが握り飯を持っとらしたとて。
そしたぎぃ、あの、春じゃったろう。
そいぎにゃその、換えっこして、猿どんが柿の種ば。
猿どんがまかすか、蟹どんがまかすか。
蟹どんと猿どんが、その一日ね、話合いしてくいなったて。
そいばってん、柿の種と交換して、
猿が柿のなったとば、ゴソゴソ登って、
柿ば、食おうと思って、ボテンボテン投げたてったい。
そいぎにゃあ、馨どんが、
「俺もくれんかーん」て。
「いやばーん」ち言(ゆ) うて、
言わすも んじゃい、その、蟹はどがんしゅうも仕方なかもんじゃいね、
猿が、わが全部(しっきゃあ)ちぎってきて、
渋かとは蟹にほたい投げよった。
そいぎぃ、蟹が腹きゃあて、
猿の尻(しい)ばひょろっと挟(はそ)うだけん、
猿の尻は真っ赤ぁしとってったい。
そいばっきゃ。
[大成 二四 猿蟹柿合戦 cf.AT九C]
(出典 未発刊)