神埼町横武 馬場崎タツさん(明12生)
山でなた、猿どんと蟹どんとおらしたって。
そうしてなた、猿どんへ蟹どんが、
「猿どん猿どん、餅つこじゃんか」と言うたって。
「そいもよかろうなっ」て言うたってなた。
そいぎあとは、
「おとんも杵借ってきやい、おいが臼借ってくるっなた」
言うたって。そいぎ、杵と臼借って来てなた、
搗(ち)いてしもうたぎにゃあ、袋ん中にすっぱあと入れて、
猿がゴソゴソと木の上さ登ったて。
そいぎ、蟹どんが、
「猿どん、猿どん、俺ん、いっちよくれんかん」
って言うたっぎい、
「いやぱん」ちて、くれんて。
そいぎ、そがん言いよっち、猿がどてえとちい落ちたって。
今度(こんだあ)蟹どんが穴ん中に入(ひゃあ)ったて。
蟹どんがへその、
「おれぇ、いっちょくれんかん」て言いよったて。
「いやばい、おとんもくれんやったろうもん。くれんばん」
て、言うてなた。
そうしたいば、そぎやん言うない
「俺(おい)が穴ん中に糞たれたかくっじゃ」と言うたて。
そいけん、蟹が挟(はそ)んだけん、猿の尻は真っ赤(まあっきゃ)。
こいばっきゃあ【これでおしまい】。
[大成二三 猿と蟹の寄合餅 cf.AT 九C]
(出典 未発刊)