神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(明34生)

 子ば捨てちゃろうが、

子ば捨ててあっちゃんかんたぁ。

子ば捨ててあったぎと、ほら、

どぎゃんしゅうもなしゃ暮しに困って、

おかさんの子ば捨てなろうがぁ。

そいぎとは、坊さんの拾うてくんさって

育てなっちゃんかんたぁ。

そして、立派なお説教坊さんに、なしなっもんね。

そいぎにゃ、おかさんな乞食姿で子が坊主になっとって言うことば

知ってなた、もう説教のあっ所さい、おかさんの参(まい)なろが。

そして、ちゃんと歌詠みばして持たせといなっちゃんかんたぁ。

その子ば捨つっ時。

歌詠みばして持たせといなろうがぁ。

その捨てられた子も良か説教坊さんになって。

自分は、母に会いたかもんじゃい、

何処(どこ)さいでんお説教に行く時は

自分に持たせられとっ上の句ば言いなろうが。

上の句ば言うて、下の句ばついでくるる人は、おらんかて、

どげででん言いなっちゃんかんたぁて、言うて。

そしたぎと、ある時、ある所で、そのお坊さんがお説教ばして

上の句ば詠みんさったぎと、みすぼらしか姿でばんんたぁ、

縁の下からはい出て来て、その下の句ば言いなろうがぁ。

そいぎないとは、講座の上から、

「あーぁ、自分の母はこいじゃった」て、言うてなたぁ、

親子の名乗りのできたわけたんたぁ。

(出典 未発刊)

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