神埼町大門 八谷勘三さん(24)

 むかしむかしない。

(さっ)どんと蟹(がに)どんと

おいなったてじゃんて。

そがん言いよんもんのう。そいから、

「あがんと、餅搗こうじゃっかん」て。

「うーん。そやよかろうのう」て。

そいから、

「お前(とん)な、あぎゃんと」と。

わが、臼ば猿が借ってきて。

そいから、あいが、餅杵ぱ借ってきた。

そして、ボッタンと、

めった搗きしよったぎなたあ。

もう、搗()いてしもうたぎと、

もう今度(こんだ)あ、猿が、

「蟹どん、お前な、

臼ぱ返()えっこんかん」ち言うて。

そうしたら、

「俺(おや)、あぎやんと、杵ば返(かえ)っくっけん」て。

そしたら、蟹が、

あんたあ臼ば返(かや)しよんないば、

遅うなんもんじゃいなたあ。

そいぎぃ、わが早(はよ)うはち来て、

搗いてしもうたとば、いち食うてなたあ。

そうして、袋の中(なき)ゃあ入れて

裏の柿の木にちい登っとったて。

そうしたいば、蟹どんが帰って来たいば

もう、なかてっちやいなあ。

そいぎとは、

「猿どんよーい」て、

(おもて)さい行くぎとは、

「おおーい」て、言うばってんが。

そいぎとは、

「今度は、こっちゃいやっかのう」

ち言()うて、裏さい来て、また、

「猿どんよーい」て言うて。

よーしとってじやんのう。

そいぎまた、表さい行たて、

「猿どんよーい」ち言うぎと、

「おーい」ち言うてっちゃん。

「ありやあ、何処(ごけ)おっじゃいけんのう」ち。

そうして行たてみやったれぱ、

もう何のこのしよったいばもう、

腰の痛(いと)うして、上ば見やったて。

そうしたぎとは、あの、

「うまかねぇ、シッチョンチョン」て。

「おりよう、お前な、そげぇおったかん」て

「うまかねぇ、シッチョンチョン」ち、言いよったて。

「お前な、そげん言わじぃ、

俺もいっちょくれんかん」ち。

そうしたいど、

「いやばん。小さげどま食わしゅうだん」ち言うて、また投げなったて。

そぎやん言いよったいぱなたあ。

そいぎんと、蟹どんがまた

「家(うち)のお爺さんたちゃあ、枯れ木の枝引っかけて、

『うまかにゃーあヒッチョンチョン』

ち言うて、食()いよいやったもん」ち、言うたて。

そうしたぎなたあ、

枯れ木の枝のボクッとおし折れて、

どっといしたて。

そいぎぃ、コンゴソゴソで這()うて、穴の中(なき)ゃあ入()り込うだて。

そうしたぎとは、猿どんが、

あぎやんと下って来て、

「蟹どん、いっちょ俺も食わせんかん」ち。

「いやばーん。お前な、

俺も食わせんやったけん、

なんの食わするかーん」ち言うて、

「食()いかけどま食わしゅうだーん」ち、ボーンと、ほいやったて。

そいしたいば、

「そげん言わんちゃ、

いっちょ食わせっくいござーい」ち。

「いやぱーん。お前な、あぎゃんと

(おい)が尻(しい)どん

()いやーい」ち言いよったて。

そうしたいば、あいが尻ばキリーッと

ねずうでなたあ、したぎんとは尻は、

(まあー)っ赤(きゃ)なった。

キイキイキイで、逃げてはしったて。

そいぎ猿(さん)の尻(しい)よ、

真っ赤しとって。

[大成 二三猿と蟹の寄合餅]

(出典 未発刊)

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