神埼町駅ヶ里 荒木レイさん(明29生)

 その、猿どんと蟹どんがおらしたてっちゃん。

そいぎ、

「ボッチ搗(ち)いて食おうやっかい」

ちて、その、猿どんが一番口言わしたて。

そがん言うて、猿どんのボッチ搗いて、

そいば猿どんの柿の木ちい登いなったて。

そして、食いよらしたぎ、蟹どんが

「おれもくいさい」て言いよったばってん、

くいななかったぎ、柿の枝のおし折れて、えぇ、ちい落ちたけんが、

そいば蟹どんな持って、

また穴の中さい

持ってはしいやったてっちゃん。

そいぎ、猿が下りて来て、また、

「おれもいっちょくれんかい」て

言いよったばってん、

「いやばん、お前(まい)もくれんじゃったやっかい」て

言うごた風で、

蟹どんなくいやらんてっじゃん。

そいぎ、そがん言いよいなったぎ、

今度(こんだ)ぁ、いやしか話ばってん、

その、猿どんのとの、

「そがんくれんないば、

お小便(しっこ)ひっかくっじゃあ」

てその、言うていっかけやったてぇやろう。

そいぎ、蟹どんの腹きゃあて、

上(あ)って来てお尻ば

キリッとねずみやぁなったけん、

尻の、お猿さんの尻(しん)のすは

真赤(まっきゃ)あきゃあ。

そいばあっきゃあ。

(出典 未発刊)

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