神埼町小渕 佐野ハツさん（明12生）
おサルとカニさんと
お餅搗こうじゃなっかん。
て、言うた話ですね。
そうしたらその、おサルさんが
餅米買いに行くでしょう。
カニさんが臼を借りに行くでしょう。
そいぎ、臼を背中に乗せてくるとかてね。
そして、お餅を、まぁ、搗いたら、
おサルさんが木の枝に、袋に入れて、
こうひっかるうて、
柿の木の枝にゴソゴソゴソ登ったとかて。
そうすっぎ、カニさんがあとから、
「一つちょうだい。一つちょうだい
」て、言うて。
「いや、くれん！」て、言うとかで。
そうして、こう、柿の木ば
ゆすって食べおったぎと、
ポキーンと折れてですね。
そして、お餅もコロコロコロでころんだ。
そうして、カニさんがゴソゴソゴソで、
拾うてみんな袋に入れて
穴の中さい引っ込んだとか言うでしょう。
そうして、穴の中さい引っ込んで。
そうしたぎとまた、
おサルが下りて来て、穴の口で、
「カニさん、カニさん、お餅くれんかい」
ちて言うと、
「お前がくれんじゃったから、
ぼくももう、やらん」ち言うでしょう。
そうしたら、
「やらんならここで、その、糞するよ！」て、穴の口で言うでしょう。
そうしたら、
「すんならしてみなさい」て、言うた。
そうしたらその、下からカニさんが
お尻をキリーンとはすんだから、
おサルのお尻は真っ赤かぁて、
言うでしょう。
そいでばあーきゃあ。
（出典 未発刊）
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