神埼市千代田町千歳大島 中島重夫さん(明39生)

  蟹浸けは、佐賀の名物ですね。

それは、むかし、鍋島の殿様が、

蟹浸けが見かけによらず美味しいものだから、

参勤交代で江戸に上った時、

将軍様にお土産として持っていかれたそうです。

そうしたら、将軍様が、本当に喜んで、

「鍋島、蟹漬けちゅうとは、ほんに【本当に】うまかのう」

と言われたそうです。

それで、鍋島さんは、

「おいしゅうはあるばってん【美味しいけれど】、

おいしいだけでなく、私は、戦の時の準備のために、

民家はもちろん、何処でん【何処でも】奨励して作らせよっです。

いざ、攻むっとなった時は、梅干しと並んで、

この蟹漬けちゅうとは、いつまっでん腐りもせん。その時の用心のためです」

と言われたそうです。

他の大名もその話を聞いて、

「ほんに【本当に】佐賀の鍋島は、抜け目のなかねぇ。

鍋島が通った跡は草もおわらん」と噂したそうです。

昔は、蟹が川辺に沢山いて、蟹の這った後は、

本当に草でも生えなかったそうです。

それで、

「さがんもん【佐賀の者】の通った跡は、草でんおわらん【生えない】」

と言うようになったそうです。

それだけ、鍋島さんは、殿様の中でも抜け目のなかったらしいですね。 

(出典 千代田の民話 P177

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