神埼市千代田町城田姉 坂井節子さん(大2生)

  むかしむかし、あるところに、

太郎兵衛というお爺さんがいました。

ある時、旅に出たところが、

山の中で道に迷ってしまったそうです。

そうしているうちに、日が暮れかかってきたので、

「どがんしゅうかぁ」と言ってあたりを見回したら、

ちょうど、権現さんのお宮さんがあったので、

よかったねぇ、と思って、

「権現さん、権現さん、今夜一晩、どうぞ、ここに泊めてくんさーい」

と頼んだそうです。

そうしたら、権現さんの言われるには、

「泊まったこっちゃよかばってんが【泊まってもいいけれども】、

夜中になんないば【夜中になると】、鬼どんが沢山きて、

騒ぐばってん、そいでん良かないば【それでもいいなら】、泊まりござい」

と言われたそうです。

太郎兵衛さんは、

「それでもよかけん、泊めてくださーい」と言って

、屋根裏に昇って、隠れていたそうです。

そうしたら、夜中になって、やっぱり鬼が沢山出てきて、

飲めや歌えの大騒ぎをしたそうです。

それで、太郎兵衛さんは目の玉が飛び出るほど驚いて、

ぶるぶる震えながら、静かにしていたけれども、

ふと、鶏の鳴きまねをしてみようかと思いついて、

「コケコッコー、コケコッコー」と言われたそうです。

そうしたら、鬼どもが、

「あらぁ、夜の明けよっ」と言って、びっくりして、

何でもかんでも置いて、急いで帰って行ってしまったそうです。

それで、太郎兵衛さんは、鬼どんの置いて行った宝物を

全部貰って村に帰って行ったそうです。

そうしたら、近所の欲が深いお爺さんが、

その話を聞いて、自分も権現さんに行って、

「どうぞ、泊めておくんさい」と同じように頼んだそうです。

そうして、屋根裏に昇って隠れていたら、

やっぱり鬼どんが、何匹でもやってきて大騒ぎをしたそうです。

それで、悪いお爺さんは、シメシメと思って、鶏の声を真似て、

「コケコッコー」と言うと、鬼どんがキョロキョロして、

「まーだ早かばってんが、おかしかねぇ」と言ったそうです。

そうして、一匹の鬼が、

「人間くさかじゃぁ」と言って、

屋根裏に隠れていたお爺さんを探し出して、

お爺さんは殺されてしまったそうです。

(出典 千代田の民話 P77

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