作:花山院路子

作:花山院路子

神埼市千代田町城田上黒井 墨田 ヨネさん(年齢不詳)

  むかぁし、

猿(さっ)どんと蟹(がい)どんがいました。

そうしたら、

「餅搗こうじゃっかん」と言うことになったそうです。

そうして、餅を搗いてしまったら、

猿(さっ)どんが、全部袋の中に入れて柿の木に登ってしまったそうです。

そうして、

「うまか、うまか」と言って、餅を食べていたら、

蟹(がい)どんが、下から、

「猿(さっ)どん、俺(おい)にも、いっちょ【ひとつ】くーれんかん」

と言うけれども、一つもやろうとしないそうです。

そうしていたら、猿(さっ)どんが、

枯れ枝に餅の入った袋をかけていたら、枝がボキーっと折れて、

餅が全部下に落ちてしまったそうです。

そうしたら、蟹(がい)どんは、餅を全部、

自分の穴の中にもっていったので、猿(さっ)がどんが、

慌てて柿の木から降りてきて、穴の上から、

「蟹(がい)どん、蟹(がい)どん、

俺(おい)にも、いっちょくーれんかん」と言ったそうです。

そうしたら、蟹(がい)どんが、

「お前もくれんやったけん、なぁーんて【どうして】くるんもんか」

と言うので、猿(さっ)どんが、

「そいない【それなら】、俺(おい)が、この穴に、糞たれてくるっ」

と言ったそうです。

そうしたら、蟹(がい)どんが、

「たるんない、たれてんやい」と言うので、

猿(さっ)どんが、穴の中に糞しようとしたら、

蟹(がい)どんが、鋏で、猿(さっ)どんの尻を挟んだそうです。

それで、猿の尻は赤くなったそうです。

だから、

「自分のよかことばっかいすっぎでけん」と昔の人は言ってましたよ。 

(出典 千代田の民話 P64

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